この記事は『エロい本棚アドベントカレンダー2022』の10日目です。

書店の本棚はエロい。書店の本棚は書店員の意図がある程度反映されているので、それが見え隠れする意味でのエロさがある。

そのなかでも、古書店のものはとくにエロい。しかし、さきほどの理由だけでは古書店の本棚のエロさが説明できない。古書店の本棚のエロさには、新刊本書店にはない何か特有の要因があるはずだ。それってなんなんだろう。

古書店の本棚ができるまで

筆者の考えでは、エロさの違いは本棚の作られ方の違いにある。比較して見てみよう。

※以下にわか知識なので間違いがあるかもしれません。

新刊本書店の本棚は基本的に、版元や取次から卸されてくる書籍で構成されている。版元や取次が今売りたい本や在庫から出したい本などを送っているのと、実際に売れるであろう本の傾向の関係で、新刊本書店の本棚に並ぶ本はどこもある程度似たラインナップになる。

一方で古書店の本棚は、店に直接売られた本と、交換会で競り落とした本とがある。交換会とは地域の古書協会などで開催されるもので、協会に加盟している古書店に売られた本がまとめて売りに出されるものだ。自店舗では売れそうにない本たちが10〜20冊程度ヒモでまとめられ、それぞれ1本2本…と数えて取り引きされている。

古書店に持ち込まれる本は1冊ということもあれば、一度に数十冊数百冊が売られることもある。そして数が多いのは、きっと身辺整理や遺品整理などで出てくるものが多いように思う。

エロい本棚が市場に流れていく

つまりことによっては、個人の本棚がごっそり古書店に売られていくのだ。そこではエロい本棚の中身が、きっとある程度エロいままに保持されている。そのエロさの残り香のようなものを私たちは古書店で感じ取り、「ああ、エロいな」と思って(思わされて)いるのではないだろうか。

古書店には、かつてどこかにあったエロい本棚の断片が並んでいる。それは持ち主以外の誰の目にも触れたことのなかったものかもしれない。それが今や誰でも見られる場所に並べられ、あまつさえ売られてすらいる。これは想像以上に危険な領域のエロさかもしれない。

家の近所にはエロい古書店があってほしい

願わくば、自宅の近くにはこのようなエロい本棚の並ぶエロい古書店があってほしい。

私はそこに通い、エロい本棚の断片と出会い、そこから本を選んで買い、持ち帰って自宅の本棚をエロくしていく。そしていつか私の命が尽きるころ、私やその意志を継ぐ人間が私のエロい本棚を持ち込むだろう。そのエロい本棚は断片となり、ふたたび古書店のエロい本棚に陳列される。それらの断片は、いつかまた別の誰かのエロい本棚を形作ることだろう。エロい本棚はエロい古書店と出会い、エロい生活環を形成するのだ。

この宇宙に広がるすべてのエロい本棚のそばに、エロい古書店があってほしいと、そう願う。

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